理化学研究所(理研、埼玉県和光市)に「雇い止め」されそうになっていた有期職員345人が、直前で雇い止めを回避した。理研は2月26日、2015年度以前から雇用されていた有期職員に限り、2018年3月末の「雇い止め」はしないと職員らに発表した。
理研は、雇用契約期間のある「有期職員」を最長5年で雇い止めにするルールを2016年に導入。有期雇用の事務系職員、約1400人中、2018年3月末で5年を迎える345人の有期職員が「雇い止め」に直面していた。
(初報記事)重宝される人材まで...ベテラン職員が「雇い止め」に直面、困惑する理研の研究現場
345人は事務やパート、研究室アシスタントなどで、短期契約を更新しながら働いてきた人が大半だ。希望すれば、研究プロジェクトや研究室の仕事が存続する間という条件で、期限なしの「限定無期雇用職」として働ける。ただ、5年の雇用上限のルールは撤廃されず、そのまま継続されるため、2016年度以降に雇われた人は5年以上働けない。このため、労組は引き続き雇用上限の撤廃を求めていくという。
理研は2016年4月に新しいルールを設け、有期雇用の職員が働ける期間の上限を「5年」とした。その際、「5年」に向けたカウントを始める時期を2013年4月までさかのぼり、2018年3月末を「5年」ルールの最初の上限期日とした。
2018年3月末時点で、理研で5年以上働いて雇用の上限を迎える有期雇用の職員は、パートや契約職員など496人。そのうち、理研が実施した無期雇用の研究アシスタント試験に合格した職員らを除く345人が3月末で雇い止めにされる事態に直面していた。
こうした対応に、労組側は「改正労働契約法が2013年4月に施行され、有期の職員を5年以上雇った場合、職員が希望すれば無期雇用に転換できるようになった。そのルールが本格的に適用される2018年4月を前に、その権利を行使させずに雇い止めできるよう就業ルールを変えた。事実上の『無期雇用逃れ』だ」として、5年の雇用上限の撤廃を求める交渉を続けてきた。
状況が膠着した2017年12月には東京都労働委員会に不当労働行為の救済を申し立て、これまでに2度の審問があった。
26日記者会見した理研労組の弁護団の一人、水口洋介弁護士は、「雇用期間の上限を理由にした雇い止めは撤回された。非常に大きな成果だ」としつつ、「ただし、問題がすべて解決したわけではない。まだ撤廃されていない5年の雇用上限は、これからも撤廃を求めていく」と話した。
理研側は、3月8日までに、該当者から雇用継続の申し込みを受け付け、3月20日には、契約更新の決裁を手続きする、と職員に説明している。労組は345人の該当者のうち、希望者が全員雇用の継続の申し込みが受け付けられ、再契約更新が確実に履行されているかどうかをチェックしたいとしている。
同日、理研で研究アシスタントや事務などの仕事をしている有期職員たちが会見。「すごく嬉しい。信じるって大事だなと思った」という気持ちも述べる一方、雇用期限が、仕事や人間関係に与える状況も語った。
「長年理研で働いていったん退職した後、半年のクーリング期間を経て、最近また雇われて同じ職場で働き始めた人もいる。そういう人は、今回の雇い止め回避の対象に入っていない。その人たちが、今後どうなるんだろうと、複雑な気持ちで働いている。雇い止めで去る予定だった人の後任もすでに入っている職場もある。人数的には膨らんでいる状況です。今回、雇い止めはとりあえず回避されたが、そういう職場で今後どういうかたちで働き続けられるかが不安です」と話した。
錦光山 雅子 Masako Kinkozan
http://www.huffingtonpost.jp/2018/02/26/riken2_a_23370981/HuffPost News
労働契約法
(有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換)
第十八条 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(契約期間の始期の到来前のものを除く。以下この条において同じ。)の契約期間を通算した期間(次項において「通算契約期間」という。)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。
◆派遣社員、無期雇用への転換の必要性
労働者派遣法改正 2015年 施行日(平成 27 年9月 30 日)
(労働者派遣の期間)
第三五条の二 派遣元事業主は、派遣先が当該派遣元事業主から労働者派遣の役務の提供を受けたならば
第四十条の二第一項の規定に抵触することとなる場合には、当該抵触することとなる最初の日以降継続して労働者派遣を行つてはならない。
第三五条の三 派遣元事業主は、派遣先の事業所その他派遣就業の場所における組織単位ごとの業務について、三年を超える期間継続して同一の派遣労働者に係る労働者派遣(第四十条の二第一項各号のいずれかに該当するものを除く。)を行つてはならない。
2015年の改正労働者派遣法では、派遣社員の派遣期間の制限が見直され、派遣社員は個人単位で同一の組織単位で働けるのが3年までとなり、その最初の期限が2018年9月末となります。派遣会社に無期雇用されている場合には、この期限は適用されません。つまり、2018年4月に無期雇用に転換しない場合は、この改正労働者派遣法により、3年が限度、すなわち2018年9月末迄で他の組織への異動を余儀なくされるというわけです。労働契約法の対象となるのは、労働契約を結んでいる派遣元(派遣会社)になります。